2019/05/24-2019/05/27

 何もないところを、

何もないところにする

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子供の頃身体が弱くて、心配した母にある女の人の家へ連れて行かれた。その人にはよくわからない力があって、体の不調を治せるそうだ。少し硬めのベッドに寝かされて、手をかざされた。体の悪い部分の上に手が来ると青くなるらしい。何人かの患者らしき人がいて妙な空間だった。その人は頭の方から足の方へゆっくり手を動かしていった。腹の上辺りにきた時、手が青くなったと言った。確かに少し青ざめているような気がした。 その場所以外にもシャーマンみたいな人とか、宇宙からのパワーを人体へ送り込む人とか、いろいろな人の所へ連れて行かれた。何もないところに何かがあると言う人たちが怖かった。 そのせいか何もない状態に近いもの、徹底的に淡白なものを好むようになっていった。それが行き過ぎて自分のことも淡白にしたくなったのかある日、解離性障害みたいな状態になった。病院に行って診断を受けたわけではないからそれが何だったのかはわからない。解離性障害は意識、記憶、自己同一性、および/または周囲の知覚の通常統合された機能が壊れることを特徴とする精神障害だ。頭がぼんやりとして、何も感情が起こらなくて、自分のことを離れたところから見ていた。見る自分はただの視点で、見られる自分はただの形で、そこには何もなかった。自分の右手を見てこれは何だろうと思ったり、自宅にいるのにここはどこだろうと思うこともあった。自分と周りの空間のあいだに透明な何かがあるような感じがして、現実感が無くて、外の景色も作り物みたいに見えた。こういう状態が辛いと思う人を解離性障害というらしい。辛いという感情が残っている解離と区別するため、何もないに近い解離が起こることを解けて離れると呼んでいる。ところで、どうしたら死んだ人を元に戻すことができるだろうか。死んだ人は無くなる。幽霊は存在しない。徹底的な何もないになるだけ。だとしたら生きている身体を何もないで充満させれば死んだ人が生きていることにならないだろうか。 絵で何を描こうとそこには何もない。人を描いてもそこに人はいない。解離した時に見たもう一人の形みたいだ。だから解けて、離れて、何もないになる絵を描こうとしている。



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反転した文字を読めるのは反転していない文字を思い起こすから。反転している文字を読む時には、反転していない文字を見ている。2行目の 何もないところ を読む時に、1行目の 何もないところ を読んでいた少し前のあなたと目が合う。






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目黒のrusuで